ビームフォーミングとは
ビームフォーミングとは、Wi-Fiルーターが接続中のデバイスの位置を検知し、そのデバイスの方向に電波を集中的に送る技術のことです。従来のWi-Fiルーターは全方向に均一に電波を飛ばす「オムニディレクショナル方式」でしたが、ビームフォーミングでは電波を特定の方向に「ビーム」のように絞り込むことで、限られた電力をより効率的に活用します。通信速度の向上と接続の安定化に貢献する、現代のWi-Fiルーターに欠かせない技術です。
詳しい解説
ビームフォーミングの仕組み
ビームフォーミングは複数のアンテナから送出する電波のタイミング(位相)と振幅を精密に制御することで実現します。各アンテナから出る電波が特定の方向で強め合い、他の方向では弱め合うように調整し、結果として特定方向に電波が集中する「ビーム」を形成します。ルーターはデバイスからの応答信号を分析して位置を特定し、リアルタイムでビームの方向を調整し続けます。
明示的ビームフォーミングと暗黙的ビームフォーミング
ビームフォーミングには「明示的(エクスプリシット)」と「暗黙的(インプリシット)」の2つのアプローチがあります。明示的ビームフォーミングでは、ルーターとデバイスが通信情報を交換してデバイスの正確な位置を把握し、最適なビームを形成します。これにはデバイス側もビームフォーミングに対応している必要があります。暗黙的ビームフォーミングは、デバイスからの通常の通信信号を解析して方向を推定するため、デバイス側の特別な対応は不要です。効果は明示的の方が高いですが、暗黙的でも一定の改善が得られます。
Wi-Fi規格との関係
ビームフォーミング自体はWi-Fi 4(802.11n)の時代から存在していましたが、標準化されたのはWi-Fi 5(802.11ac)からです。Wi-Fi 5以降ではビームフォーミングの実装方法が統一され、異なるメーカーの機器間でも安定した動作が期待できるようになりました。Wi-Fi 6/6EではOFDMA(直交周波数分割多元接続)技術と組み合わさることで、さらに効率的なビーム制御が可能になっています。
MU-MIMOとの連携
ビームフォーミングはMIMO/MU-MIMOと密接に関連しています。MU-MIMOが複数のデバイスに同時送信するためには、各デバイスに向けた個別のビームを正確に形成する必要があり、ここでビームフォーミング技術が活躍します。この2つの技術が連携することで、スマートフォンやPC、IoT機器が多数接続されたネットワーク環境でも、各デバイスに効率よく電波を届けることが可能になります。
選び方のポイント
1. ビームフォーミング対応を明記した製品を選ぶ
現在販売されているWi-Fi 6以降のルーターはほぼすべてビームフォーミングに対応していますが、エントリーモデルでは対応が限定的な場合もあります。製品仕様にビームフォーミング対応と明記されているかを確認しましょう。
2. アンテナ数の多いモデルを選ぶ
ビームフォーミングの効果はアンテナ数が多いほど高まります。4本以上の外部アンテナまたは内蔵アンテナを搭載したモデルは、より精密なビーム制御が可能です。
3. ルーターの設置場所を最適化する
ビームフォーミングがあっても、ルーターが部屋の隅にあるとカバーできる範囲に限界があります。できるだけ家の中心に近い高い位置に設置するのがおすすめです。広い住居ではメッシュWi-Fiとの組み合わせも効果的です。